「おはようございます」
「おう」
「はよー」
「絢香ちゃん、おはようございます」
居間は、広めのダイニングキッチン。
花鶏さんが立つキッチンからは、すごく美味しそうな匂い。
「うわぁ、オムレツ!」
「はい。昨日私が買ってきたクロワッサンもありますが、ご飯とどちらがいいですか?」
「んー……」
クロワッサンは捨てがたいけど
パンってすぐ、お腹すいちゃうんだよなぁ。
悩む私を見かねてか、花鶏さんはうふふと笑った。
「よかったら、私とパンを半分こしませんか?」
「えっ、いいんですか!?」
「はい」
「じゃあっ、ご飯にします!」
にっこりと、天使の微笑み。
花鶏 藍(あとり らん)さん。偽名。
長い黒髪を今は一つに結って、ぱっちりした目でいつもにこにこ。
お話してると、何となく安心する、そんな人。
