「お前に手当てされても、全然嬉しくねえんだけど」
「静かにしろ。今集中してんだから」
雅也の手によって綺麗に包帯が巻かれていく。
「…お前器用だな」
「昔からよく巻いてたからな。ほらできた。折れてはないだろうけど、結構重い捻挫だから。体育祭は止めときなよ」
「それは無理だな。あいつに勝った時点で、出るのは決まったんだ」
「その足じゃ、痛くて走れないと思うけど。まあ莉緒は昔から諦めが悪いから、言っても無駄か」
よくわかってんじゃん、雅也。
「俺この時間サボるから、サンキューな」
「俺もサボろうかな」
「…珍しいじゃん、優等生。いいのか?顧問にチクられてもしらねーぞ」
「たまにはいいだろ」
そう言ってソファーに寝転がった雅也の横に俺も寝転がる。
「俺もさ」
「ん?」
「クラス代表でリレー走ることになってんだ。アンカーで」
「…そうか」
こいつも見た目によらず、足が速かったんだっけ。ってことは俺、雅也と走るのか。
「椎奈ちゃんに良いとこ、見せるからさ。お前も愛菜ちゃんに良いとこ見せてやろうぜ」
「おう」
雅也によってつき出された拳に、自分のものを合わせる。
愛菜に良いところ、か……。


