放課後になり、雅也は部活に行ってしまった。
…俺も、帰っかな。
包帯の巻かれた足を引き摺りながら、保健室のドアを閉めた。
「…莉緒」
「愛菜?」
「雅也くんに聞いて、鞄持ってきた」
「あ…サンキュー」
少し驚いたが、愛菜から鞄を受け取ろうとした。が、鞄は一向に俺の元に鞄は戻らない。
「鞄、くれ」
「ダメ」
…駄目?いや、言ってる意味がわからねーんだけど。
「足、痛いんでしょ?私が鞄持つからさ。一緒に、帰ろう?」
「いや、自分で持つから…」
女に荷物持たせるなんて、男じゃねえだろ。
「ダーメ。ほら、行くよ」
とか言って、さっさと歩き始める愛菜。
あのさ、一応俺足痛めてんだけど…。優しいのか優しくねえのか、イマイチよくわかんねー奴だな。
「莉緒ー早く」
「ああ、今行くよ」
ったく……。
歩きながら、ふと違和感を覚えた。いつもとは違い愛菜が俺の歩調に合わせてくれているから、か。
「ねえ、莉緒」
「ん?」
「足、痛むんだよね?その足じゃあ、リレーなんて…」
「…出る」
誰に何を言われても、絶対に出てやる。
「じゃあせめて、原田くんにアンカー代わってもらいなよ」
「あ…?」
一瞬耳を疑った。…今何て?いくら愛菜でも、言って良い事と悪い事があるだろ…。
俺がなんでアンカーにこだわるか、こいつはほんとにわかってない。
「そしたら、莉緒の負担も軽くなるし…」
「…今度あいつの名前口にしたら、許さねえからな。俺の事はほっといてくれよ。…愛菜には関係ないだろ。……じゃあな」
どうやら俺の中で何かが切れたらしい。
愛菜から無理矢理鞄を奪い、一人で帰路についた。


