2年3組 空部 満

少し変わった苗字に、よく読み間違われる私の名前。


読み方は
"そらべ みちる"
である。



そんな私にはもうひとつの名前がある。


空き部屋の女生徒
"あきべ みちる"



まるで幽霊のようなこの名前がつけられた理由は簡単だ。

私は放課後や授業さぼりを学校の奥にある、使われていない教室で過ごす。

"第二特別教室"と名付けられているその教室は、数年前までは少人数制の授業や自習室、追試会場として使われていたらしいが、最近は生徒数が少なくなり、全く使われなくなった。

机や椅子には埃がかかり、黒板は物好きな卒業生達が書いたのであろう落書きでうまっている。

その落書きが"拓海くんとずっと一緒にいたい"とか"祐輔ともとに戻れますように"なんていう恋愛系のものばかりなので、この教室には恋愛のおまじない的なものがいくつかあるらしい。


ただ、壁が汚れ、クモの巣がところどころにあって、くもった窓からは少量の光しか入ってこないこの薄気味悪い教室には、もちろん悪いジンクスもたくさんあって、人は滅多にこないのだ。



そこが私の居場所。