「……泣いたの?」 赤くなった蓮の瞳が痛々しい。 「泣いてないよ。目にゴミが入っただけ」 通用しない嘘を吐いて蓮は俺の腕を乱暴に振りほどくと、無言のまま食事の支度を続けた。 ……蓮が泣いたのを見たのは……どれぐらいぶりだろうか。 キッチンに茫然と立ち尽くしたまま、漠然とした記憶を探る。