一年前と全く変わらないままの部屋の中、少女の演奏会は続いた。

観客は猫一匹。

でも少女には……それで充分だった。

その手でもう二度と生み出す事の出来ないと思っていた《音楽》は、頼りなくぎこちないが、キチンと彼女の手から生み出されている。

その事実だけで、少女は満足だった。

それこそがこの一年の、少女の努力の《証》なのだから。

最後に少女が弓を引けば、その旋律は静寂へと溶け込み、消えて行く。