「……はい、どうぞ」 そう言って車の助手席のドアを開けると、ノラは「ありがとう」と小さく言って席に座った。 運転席に座りエンジンを掛け、病院から家へと向かって走る。 家までの距離は……十分ぐらい。 運転する俺の横で、ノラはボーっと流れる景色を見つめている。 ノラは何をする訳でもなくボーっとするのが好きな様で、家の中でもボンヤリと外を眺めている事がよくあった。