さわさわと風が草木を揺らす音が聞こえ、その中で真っ直ぐに父を見つめる。 すると次の瞬間、父は小さく手を叩いた。 パチパチと静かな庭に父の拍手が響き、そのたった一人の観客の温かな拍手に、瞳にジワリと涙が滲む。 ……もう二度とないと思っていた。 私がバイオリンを弾く事も、こうして誰かに拍手を貰う事も。 私は永遠に《音楽》を、《希望》を、そして《未来》を……全てを失くしたと思っていた。 でもきっと……それは違う。