美しい花達が、微かに吹く風に揺れていた。

手入れの行き届いた花壇に、赤と白のバラのアーチ。

その庭は花の好きな母がいつも手入れをしていたもので、母が亡くなった後は、奈緒先生がそれを綺麗に整えてくれていた。

そんな少し幻想的にも見える庭に、一人の男が立っている。

彼は真っ直ぐに私を見つめたまま動かず、私も彼を真っ直ぐに見つめ返したまま動けなかった。

彼の瞳からは何の感情も読み取れず、それは私のよく知っている……いつもの父の姿。