でも……本当は後悔していた。

もしもあの時、行かないでと叫んだのなら、一緒に連れて行ってと縋ったのなら……もしかしたら彼女は、僕の傍に居てくれたかもしれないと。

でもやっぱり僕には出来なかった。

だって僕は……彼女の《音楽》が好きだったから。

彼女の奏でるバイオリンが、彼女が悲しそうに口ずさむ子守唄が、彼女が必死に諦めようとしていた《音楽》が……僕は好きだった。