《……ごめんね。ごめんね……蓮》

細い肩を震わせて泣きながら走り去る母の背中を、ただ茫然と立ち尽くしたまま見送ったあの日を……僕は覚えている。

……置いて行かないで。

それまで何度も繰り返し母を困らせたその言葉を、その時は言う事が出来なかった。

母の悲しい瞳に、何を言っても引き止められないと……そう感じたからかもしれない。