「……グハッ!!」
急に順平の悲痛な叫びが聞こえ、それと共にガタンと何かの倒れる音が聞こえた。
その音にそっと後ろを振り返れば、腹を擦りながら眉間に深い皺を刻んでいる順平の姿が見える。
どうやらノラの蹴りが思いっきり鳩尾に決まった様で、順平は腹を抱えたまま床をのた打ち回っていた。
それからそっと視線を上げれば、ゼイゼイと肩で息をする彼女の強い瞳と、真っ直ぐに目が合った。
「私はこんな事されても諦めたりしない!!絶対に蓮を連れて帰るって……明と約束したから!!」
ゼイゼイと呼吸を荒げながらそう言ったノラは、そう言って微かに震える手を僕に向かって差し伸べた。
そんな彼女の姿を見て、カウンターに立っていた和也が微かに笑みを浮かべて見せる。



