「いいよ。置いてもらってる身で悪いしね。順平は机を拭いて」

「……すいません。じゃ、お願いします」

そう言うと彼はふぁ~と気の抜けた欠伸をして、のんびりと机を拭き始めた。

……見た目は凄いが……悪い奴じゃない。

普段はボーっとしているが、仕事が始まれば意外と真面目に働いているし……気も利く優しい子だ。

そんな彼の後ろ姿を見て微かに笑うと、そのまま床をモップで掃いて行く。

そっと壁に掛けられている時計を見れば、すでに夕方。

地下のこの店には窓が無いので分からないが、きっと外が暗くなり始めている頃だろう。

そんな事を考えながらゴシゴシと床を擦っていた……その時だった。

カチャンと小さな音を立てて、ゆっくりと店の扉が開かれる。