《僕が君に出来る事はあるか?》
全てが終わったその後、そう言って喪服姿の父は真っ直ぐに僕を見つめた。
父……須藤亮介。
初めて会った彼は驚く程に……明に似ていた。
顔も声もふとした仕草さえも、彼は明によく似ている。
そんな事を考えながら、そっと父から視線を逸らす。
彼をあの場に呼んだのは……他ならぬ祖母だった。
僕が生まれた事すら知らない彼に、祖母は手紙を送っていたそうだ。
祖母から父へと宛てたその手紙の震える文字を……ただ目で追って行く。
そこには僕の事や、僕を捨てて出て行った母の事。
そんな僕等に良くしてくれた桜木夫妻の事。
それから僕の行く末を案じた祖母の想いが書かれていた。
そして最後に書かれているその言葉に、強く唇を噛み締める。
……蓮をお願いします。
どんな思いで、祖母はその言葉を父に送ったのだろうか。
その祖母の想いに胸が痛み、手紙の文字が揺らいで見えなくなっていく。