……混乱していた。

彼女の話す父の姿と、私の中の父の姿が……違い過ぎていたから。

だって父はいつも不機嫌そうに怒っていて、殆ど話さず、気難しい人。

音楽に対する姿勢が厳しく、周りの皆も怖がっていたくらいだ。

……お父さんが……

そんな事を考えていた時だった。

どこからか軽やかな電子音が聞こえてくる。

「……あ、私の携帯だ」

そう言って鞄から携帯を取り出すと、小さな液晶には《明》の文字が点滅していた。

その文字を見つめていると、隣りに座る彼女が小さく頷いて見せる。