「正直、私は蓮がどんな子に育ったのかさえ知らない。蓮が中学生の時、母が死んで……それからあの人が蓮を引き取ったと後から知ったの。最低な事に、私、自分の母親が死んだ事さえ知らなかった。……何も知らなかったの」
「……先生」
また小さく彼女を呼ぶと、彼女はそっと顔を上げ困った様に笑う。
「その頃私は貴女のお父さんと再婚していた」
その彼女の言葉に微かに眉を顰めると、彼女はそっと握り締めた私の手に、手を触れた。
「私は貴女に言って無い事があるの。お父さんには《言うな》と言われていたけど、やっぱり大人になった貴女には聞いて欲しい」
そう言った彼女を暫く見つめ、そしてコクンと頷いて答える。



