△~triangle~


「最低だって分かっていた。何て身勝手で愚かな考えなのか……自分に失望したわ。でも結局私は……音楽を選んでしまった。自分の産んだ子供を捨ててまで」

彼女はそう言うと、自嘲気味に笑って俯いた。

「貴女のお父さんとお母さんの支援を受けて、私はまた音楽の道を進み始めた。蓮を母に預けて、練習に留学。そのうち少しずつ仕事が来るようになって、だんだん……家に帰らなくなっていた。家に帰れば蓮が行かないでとぐずって、仕事に向かえば母から蓮を置いて行く事を責められ……疲れていた。最低だって分かっていても、どうする事も出来なかった。そしてついに、母と大喧嘩に発展したの。そのまま蓮を置いて家を飛び出して……それっきり。一度も家には帰って無い」

奈緒先生はそう言って深い溜息を吐いた。