キッチンで夕食の支度を終えると、そっと壁に掛けられている時計を見つめた。
時刻はすでに20時を過ぎていて、大きな窓からは星の見えない薄暗い空と、街の眩い光が見える。
……そろそろ明が帰って来る。
そんな事を考えながら、そっと《彼女》に視線を向けた。
彼女は僕に背を向ける様に膝を抱えたまま、部屋に置かれているテレビを見ている様だった。
その彼女の横にはシロとクロが寄り添い、眠っているのが見える。
テレビにはたいして面白くもないニュースが流れていて、おそらく彼女の意識はテレビには向けられていないと分かった。
料理の後片付けを終えると、彼女の方には行かず、ダイニングテーブルの椅子にそっと腰を下ろす。
彼女は僕の動きに気を張っている様で、微かにこちらを振り返ったが、すぐに視線をテレビへと戻した。
二人と猫二匹のこの部屋には重苦しい空気が広がり、彼女には気付かれない程に小さく息を吐く。