「……ねぇ、蓮。私達、昔に会った事がある?」

その私の突然の問いに、蓮の顔から笑みが消える。

しかし次の瞬間には、蓮の整った顔に柔らかないつもの笑みが浮かんだ。

「……何の事?」

そう言って蓮は不思議そうに首を傾げて見せる。

「十年以上前に、私、蓮に会った事がある」

笑みを浮かべる蓮を真っ直ぐに見つめたままそう言い切ると、蓮は笑みを浮かべたまま……私から視線を逸らした。

その蓮の姿に、私は小さな確信を覚える。

……やっぱりあの少年は……蓮だ。

……間違いない。

よく見ればあの記憶の中の少年の面影が……蓮に中に見つける事が出来る。

「会った事は無いと思うけど」

蓮はそれだけ言うと、そのままキッチンへと向かって歩いて行く。

「明は今日バイトだって言ってたよね。帰ってきたら食べられる様に、ハンバーグ作っておかないと」

「……蓮」

そう彼の名を呼びキッチンへと向かう彼を追うと、蓮はそんな私を無視して夕食の準備を始めた。

「覚えてない?十年前、公園で一緒に遊んでくれた事。私ずっと忘れてなかった。でも、十年も経ってそれが蓮だったなんて気付けなくて……」

「ノラ、僕じゃないって言ってるでしょ。ノラの勘違いだよ。僕は公園で誰かと遊んだ事なんて無いよ。それに十年も前の話でしょ?誰かと間違えてるんだよ」

蓮は料理の手を止めないままそう冷たく答える。

「間違えてなんか無いよ。だって今日写真を……」

そこまで言って……口を噤んだ。

ただ茫然と蓮を見つめたまま、その場に立ち尽くす。