「……もうこんな時間?」

時計を見た蓮が少し驚いた様に呟き、ゴシゴシと目を擦った。

それに彼の溢れていた涙は掻き消され、見えなくなる。

「ヤバ、寝坊した」

そう言って明は勢いよく立ち上がると、そのまま洗面所へと走って行ってしまう。

「すぐに朝ご飯作るね。ノラはもう少し寝てていいよ」

蓮はそう言って優しく笑うと、そのままキッチンへと向かって行った。

「わ、私も手伝う」

その私の言葉に蓮は小さく首を傾げると、不思議そうに笑った。

「ノラが早起きなんて珍しいね。何かあったの?」

蓮のその問いに《別に》と短く答えると、蓮は困った様に笑って朝食の準備を始める。

……早く目が覚めてしまったのは……あの夢を見たからかもしれない。

ずっと大好きだった彼の、あの悲しくて、優しい夢を見てしまったから。

そんな事を考え蓮の手伝いしながら、そっと気付かれない様に蓮の顔を覗く。

テキパキと朝食の準備をする蓮の顔色が……少し悪く見えた。

……悪い夢でも見たのかな。

そんな事を思った瞬間、蓮がこちらを振り返り、バッチリと目が合ってしまった。

慌てて視線を逸らすが、時すでに遅し。

「……どうしたの?」

怪しい私の態度に、蓮は微かに眉を顰めて首を傾げて見せる。

「な、なんでもない」

何とか声を絞り出しそう答えると、蓮はまた困った様に笑った。