……夢を見た。
それは遠い、遠い昔の懐かしい記憶。
……シンと静まり返った一人きりの広い部屋。
勢いよくベッドから飛び起きると、ゼイゼイと肩を揺らしたまま荒い呼吸を続ける。
「……どうして……どうしてこんな事に」
ブツブツとそう繰り返しながら、ベッドの上で小さく膝を抱えた。
眠れば必ず襲われる酷い悪夢に、俺は眠れない夜を過ごし続けていた。
《どうしてあの人は……私を愛しては下さらないのかしら》
《負けないで……明》
《あんな子に……あんな女の子供に負けないで》
《……貴方こそが、この須藤家を継ぐに相応しい後継者なのだから》
まるで呪いの様な母の囁きが繰り返し頭の中に響き、それを振り払う様にブンブンと首を横に振った。