たまたま遅くなってしまった学校の帰り道での事だった。

「ねぇ、これってどうやって買うの?」

突然声を掛けられ振り向くと、小学校の高学年ぐらいの男の子が困った様に眉を顰めていた。

彼はジュースの自動販売機の前で一万円札を手にしたまま、首を傾げて僕の答えを待っている。

「すっごい喉乾いてて買いたいんだけど、これってどうやって使えばいいのか分かんなくて」

そう少年は僕に説明すると、そっと一万円札を差し出して見せた。

「アンタも好きなの買っていいから、コーラ……買ってくんない?」

少年はそう言うと無理やり僕の手にお札を握らせ、早くしろとばかりに目で訴えてくる。

「自動販売機の使い方……知らないの?」

その僕の問いに少年は不機嫌そうに眉を顰めると、大きな溜息を吐いた。

「今まで一人で外に出た事とか無くて、どうすればいいのか全く分かんねェ」

彼はそう言ってフイッと顔を背けると、苛立つようにトントンと靴で地面を叩く。

「で、買ってくれんの、くれないの?」

その彼の問いに一万円札を手にしたまま、視線を自動販売機に向ける。