「名・ふ・だ」

彼は笑いながらあたしに言った。
あたしは驚いて、胸ポケットの名札を見る。

“杉下　那歩”（すぎした　なほ）

ありゃりゃ。本当だ。
名札なんて物騒なものつけてるとこの人以外にも名前を知られちゃうよ。
あたしはしかめっ面をすると、Ａ高につれてってといった。
彼は走り出した。
すごく楽しそう。
普通、知らない変な女学生をのせて笑いながら走る人っていないと思うんだけど？

「名前は？」

走り出してすぐ、あたしが聞いた。
彼は前を向きながら優しく、

「朝吹祥平、（あさぶきしょうへい）」

といった。
祥平、くん？
祥平と名乗った彼は、長身で、かっこよくてモデルみたいな人だった。
ジュ○ンボーイとかだったりするかな？（笑）
いや、しないよね、ま・さ・か。

「祥平って呼んでい？」

あたしが問いかけた。

「いーよ、何気俺が那歩とか呼んでるしさ」

祥平はあたしを見て、少し微笑んだ。