始業式の後、決められた教室にぞろぞろと移動していく。

「いーちかっ私達同じクラスだよ、一緒に行こう?」
後ろから声を掛けてきたのは私の親友、錦織亜美(ニシキオリ アミ)だ。赤みがかかった茶髪に、真っ赤な目。可愛いと言うより、綺麗と形容されるであろう容姿。身長は高く、スタイルも良い。

実を言えば彼女は前の世界の使い魔(コウモリ)である。家に籠もりがちだった私に心配した親が連れてきた話し相手が彼女だった。彼女は直ぐに私だと気付き、私に抱きついたかと思うとそのまま泣き始めた。


『夢かと思いました。会いたかった。本当に本当に会いたかった!!』


私に縋りついて泣きじゃくる彼女がとても愛しくて、それからは使い魔と魔女ではなく、友達という関係になった。

私達は中々良い関係を築けていると思う。彼女が少し私に依存気味だという点をのぞけば。

私が遠い目をしているのに気付いた亜美が「大丈夫?」と心配してくる。

「あっ、そういえば私達と同じクラスに超イケメンがいるんだってさ!」

「ふぅん、そうなんだ。珍しいね。亜美が男の子の話をするなんて。」

ニヤニヤと笑いながらかえすと、亜美は真っ赤になりながら

「そそそそんなんじゃないよ!私は単なる報告…そう、報告よ!壱香にも春が訪れますよ〜にっ!」

まるで願掛けをするように私に向かって両手を合わせる。

「私にしても意味ないでしょ。それに、私より自分のこと心配したら?」

笑いながら言ったら急に亜美がニッコリとした無邪気な笑みになって

「私のことはいーの!壱香の王子が来るまで私は壱香のだし、壱香は私のなのー。これは決定事項!返品はできませーん」

「返品って(笑)訳分かんないよ」

亜美は昔からそうだった。私には王子がいると信じていて、例え王子に決められた相手がいても、最後まで私を応援してくれた。私はいつもそれが嬉しくて、亜美のそんな所に救われていた。ってダメだ。これだと彼氏ができても亜美を第一に優先しそうだ。

いかんいかんと頭を振る私に、亜美は頭に?を浮かべていた。

それに

それに私に王子なんているはずがない。王子と魔女は永遠に幸せにくらしました。なんておとぎ話は存在しちゃいけないんだ。
というより、こんな性格暗い女子なんて嫌でしょう。普通に。私が男だったら私より亜美を選ぶな。うん。ってまたこんな思考に陥ってる!案外亜美より私の方が亜美に依存してるのかも。