私は魔女。
これは比喩でもなんでもない。おとぎ話に出てくる魔女の生まれ変わり。前世の記憶を持ったまま転生してきた。私は王子様に倒され死んだ後、神様に言われた。
『魔女、お前は私の暇潰しに選ばれた。お前にはもう一度人生をやり直してもらう。別に、前世の様に物語に沿って生きなくてもよい。つまらないからな。姫役と仲良くなろうが、王子役を嫌おうが、お前の勝手だ。あぁ、質問は受け付けない。面倒だから。では、いってらっしゃい、魔女。面白い物語を期待しているぞ。』

その言葉を聞いた後、私は気付いたら赤ちゃんになっていた。

母親も父親も日本人。しかし、二人共容姿が良かった。その遺伝子を継いだ私も自分で言うのもなんだが綺麗な容姿をしていた。白い肌、黒く輝く髪と瞳。身体はひどく華奢で、まるで人形の様だ。

生まれてから十五年。私はずっと隠れるように生きてきた。神が言うには、この世界には姫役と王子役がいるらしい。触らぬ神に祟りなし。私は結局、関わらないことにした。物語がつまらなくなる?知ったことか。私は自分の意志で生きる。


今日は高校の入学式だ。私は前世魔女だったからか知らないが、勉強が好きだった。私の父親は大企業の社長で、母親がその秘書の為家はとても裕福だ。私は社長令嬢なので、よく身元を狙われた。両親は心配して私に護身術を教えてくれた。元々運動神経がよかったのかどんどん強くなっていった。話が逸れたが、家には沢山の本があり、小さい頃からそれらを読み耽った。中には日本語で書かれていないのもあったが私にとっては大した問題ではなかった。周りはそんな私を天才だ、神童だと褒め称えた。つまり何が言いたいかというと
私はこの高校にトップで入学した。

「〜。…続いて新入生の挨拶です。新入生代表、前へ!」

「はい。」

呼ばれた私はスタスタ前に歩いていく。

「新入生代表、神山壱香(カミヤマ イチカ)です。〜。」私は記憶しておいた言葉を淀みなく喋る。
一通り言い終え、礼をしてから座っていた椅子に戻るために板張りの道をもどっていく。すると、途中に座っていた男の子と目が合った。髪の毛は恐らく地毛なのであろう、丁寧に整えられた茶色の髪に、同じ色の目。容姿は驚く程整っており、座っていても分かる程足が長くスタイルが良い。さぞかし女子にモテるのだろうな。と思っていたら相手がニコリ、と笑った。私も釣られて微笑めば、相手は少し顔を赤くした。私は別に鈍感という訳ではないので、あぁ照れているんだな。という感想を抱いた。そして少しドキドキもした。恐らく私は彼の笑顔と照れた表情に惹かれたのだろう。端的に言えば、一目惚れである。
どうか彼が王子役でありませんように。

(残念だったな。と誰かが言った気がした。)