手を伸ばして銀色に輝くドアノブに手をかける。

―― カチャリ

重い重い鉄の扉を開けば、ソコには青い青い空。

もともと立ち入り禁止のこの場所。

僕意外に訪ねて来るのは決まってる。

いつもの指定席はまだ空っぽで、どうやら彼女はまだらしい。


「まだかな…」


暦的にはもうすぐ春で。

けれど、現実的にはまだ春には少し遠い。

どっかの安っぽいドラマの台詞にあったように、

「時間は待ってはくれない」
だとか、

本当にそれで、

時間は待ってはくれないし、季節は足早に廻って。

僕らはたまに、早すぎる暦についていけなくなったりする。

けれど時計は確実に秒を刻み続けるし、

どう足掻いたって、僕らは時計の刻む一秒一秒を生きる他ないのだ。


そうして僕らは気付かないうちに時間に追われ、

僕らは“一瞬”を忘れてしまう。

一度しかない大切な一瞬を忘れて、
慌ただしさの中に永遠の幻想を見る。