病院に着くと助産師さんが出迎えてくれ、血圧と体温を測定した。

今日は日曜で休診の為、いつもの明るい院内のイメージとは違い静かでひっそりとしている。

その雰囲気が私の緊張感をますます煽った。

数分後、奥の部屋から院長先生が登場した。

その姿を見て私は、お休みの所すみませんねえと思った。

診察台に上がりながらもチョロチョロと水が流れている。

またしても「これはもうアウトっしょ」と自分にツッコミを入れる。

医師が破水かどうかを確認するには色々な方法があるらしいが、その結果はすぐに出た。

「破水だね、破水、破水。破水してますよ」

ああ、やっぱり。

それにしてもそんなに破水を連呼しなくても・・。

「じゃあ、入院して下さ〜い」

ああ、そんなあっさり。

しかもあっけらかんと。

わかってはいたものの突然の入院に私は若干動揺し、梅干しを食べた時のような酸っぱい表情になった。

「マタニティビクスは何回通いましたか」

突然院長が切り出した。

噂には聞いていた、院長はマタニティビクスの回数を非常に重要視しているらしい。

「えっと、40回くらいだと思います」

本当は30回くらいだったのに、とっさにちょっと色付けしてしまった。

「え?何回?」

「はあ、40回です」

若干嘘をついているだけに、二回聞かれると何とも気まずい。

院長はそれだけやれば効果は抜群だよと上機嫌になり、私の心は痛んだ。

それから入院と出産の説明を聞き待合室に戻り、入院の準備ができるのを待っていると夫が言った。

「マタニティビクス40回も行ったの?」

本当は30回くらいだったのを知っている彼はニヤニヤしている。

「違うよ、家でもやってたから合わせると40回だよ!」

私は慌てて静かに叫んだが、夫はへえとケラケラ笑っていた。