流れ落ちる涙に反比例して、おかゆは少しずつ減っていくけれど、心は比例して暖まっていく。・・・・・私はこの日のことを忘れることはないだろう。スプーンを置き、彼女は涙を拭いて呼鈴を手に取った。









「お食事は、いかがでしたか?」


新しく入れであろうお茶を湯飲みに注ぎ、店員は口を開いた。


「はい。とても美味しかったです。ありがとうございました」


「お礼など……私どもはお客様が所望するものをご用意させて戴いただけのことでございます。それでお客様が喜んで頂けたら、私どもはそれでよいのです」


「はい……。あ、あの、このお粥を作られた方を呼んで頂いてもよろしいですか?」


「かしこまりました」


店員が胸ポケットから出した呼鈴を鳴らすと、ほどなくして背の高い、板前の格好をした堅そうな男性が現れた。


「彼が、今回の料理を作った者でございます。さあ、お客様にご挨拶を」


「日本料理からアジア料理一般を担当している、三木宗一郎と申します。お料理はいかがでしたか?」


「とても美味しかったです。母の味を思い出しました。本当に、本当にありがとうございました」