「それは彼女が決めること。那智には関係ないでしょう」
まどかさんは、冷たい声でそう言った。
「…七海、そのカバン貸して。私がenに届けるわ」
「あ、はい」
七海はまどかさんにカバンを渡した。
「那智、あんたのファンを大切にするその精神は立派なものよ。でも、enだってちゃんとファンのことを思ってる。
…思ってるからこそ、ばらせないのかもしれないでしょう」
正論だった。
俺は何も言わずに、楽屋へと入る。
「…まだまだ子供ね…
七海、あんた、sabotageの所に行って」
「わかりました」
廊下からそんな声が聞こえてきた。
他のメンバーも七海と一緒に楽屋へ入ってくる。
「那智、どうしたんだよ」
「…別に」
俺がそう答えると、馨は溜め息をついた。
「なぁ、那智。俺達sabotageだって他人に活動についてどうこう言われたくないだろ?少しはenの気持ちも考えてやれよ」
「ま、俺は那智のファン第一精神好きだけどなー」
真が笑いながらそう言った。
「……那智くん」
七海が、一歩だけ俺に近づく。



