その時、俺達sabotageの楽屋の隣の扉が開いた。

出てきたのは…

「七海…やっぱり来てたか」


「あ、sabotage!!お疲れ様でした!!」

enのマネージャーを勤めている、七海だった。


俺達とは同級生で、通う学校も同じ。


…ただ、学科は違うが。

「七海、enは?」


「あ、まどかさん。enはもう車にいます。私は手荷物を持ってきてほしいと言われたので…」

そう言った七海の手にはカバンがあった。


「戻るのが早いわねー相変わらず…」

まどかさんは少し困ったように笑った。

この人…実の娘にもまどかさんって呼ばせてるのか…


「…まどかさんはenが誰だか知ってるんだよな?」


「『だよな』?」


「…知ってるんですよね?」

俺が訂正するとまどかさんはにこりと笑って

「言葉遣いは丁寧にね。この業界は厳しいんだから。

えーっと…enの正体?知ってるわよ。当たり前でしょう」


「…じゃあ、何であんなに隠したがってるかは?」


「…色々不安なんでしょうね」


「それだけ?それだけで顔も、喋るときの声も?

…ファンは、enのファンは、知りたがってる!!そろそろ公開したっていいんじゃないのか?…いいんじゃないですか?」