トークをこなし、他の出演者の歌を聞いていくうちに、俺達の出番となった。
スタンバイをし、目を瞑って深く呼吸をする。
「…いよいよか…」
「それでは歌っていただきましょう‼今夜が初披露です‼明後日発売のアルバムに収録されているこの曲…」
スタジオが暗くなり、馨のドラムの音が鳴り出す。
蓮と真がギターとベースを掻きならし、スタジオは色とりどりの照明がつく。
俺は目を開いて歌い始めた。
観客の驚いている顔が目に入る。
司会も、スタッフも驚いてる。あのまどかさんも。
エミリーは満足そうにうなずいている。
どうだ、これが今のsabotageの実力だ…‼
イントロの部分でも観客達は、一瞬たりともステージから目を離さなかった。
蓮も、真も、馨も上手くなっている。だから、観客が聞き入っている。
再び俺が歌い出す。
観客の顔には笑みが浮かび始め、跳び出す人も出てきた。
今回披露しているのは応援歌。
元気になって、やる気を出してもらいたい歌だ。
観客が跳んでいるこの光景は…観客を歌の世界に引き込めたということでいいのかな。
曲が終わってしまう。
まだ歌っていたい…‼
しかし、曲は終り、照明が再び消えた。
一瞬の静寂。
しかしすぐに割れんばかりの歓声と拍手が響いた。
司会も進行するのを忘れていて、スタッフにカンぺで怒られていた。



