番組の中盤にさしかかり、ついにenの出番となった。


「それではenさんに歌っていただきます。初公開です。」

会場が静まりきり、観客達の息づかいが聞こえてきそうだ。


…ここまで観客達を集中させる彼女はホントにすごいと思う。

前奏が流れ、彼女はマイクを仮面の口の部分へと持って行く。


…最初の音は、女性とは思えない低音で鼓膜をゆっくり震わされる


次の瞬間に急激に音は上がり鼓膜が細かく、速く震える


思わず、息を呑んだ。

しかも、単に歌が上手いだけでは、ない。


歌詞が、メロディーが、心に響く。

今回は失恋ソングの歌…会場にいる、女性の観客の中には涙を流す人もいた。


彼女が歌い終わると、しばらくは誰も口を開けなかった。

そして、割れんばかりの拍手と、大きな歓声がスタジオ中に響いた。


「enさん!!ありがとうございました!!」

司会者の目までもが潤んでいた。



やっぱり、彼女はすごい。

しかも、今日の曲で出した低音が、高音が、限界の音では無いというのだから脱帽してしまう。






けれど同時に、激しく嫉妬してしまう。