彼女が抱えている大きすぎる秘密


「なによ那智。あんた英語の成績ひどくはないでしょ?」


「そうだけど、良いってわけでもない‼
本場の人たちに通じるほどの発音ができてるわけでもないのに…歌!?」


「だから、あなたは明日からエミリーと特訓なんでしょ」

…嫌な予感はこれか‼

エミリーの方に恐る恐る顔を向けると

「那智、よろしくね。二ヶ月後には、私とは完全に英語で会話できるようにしてもらうわ」

にこにこと、眩しい程の笑みを浮かべていた。


「あ、那智だけでなく、蓮も真も馨も日常会話くらいはできるようにね。

それだけでなく、それぞれの練習も忘れずに。本場で曲を売り出すんだから、下手だったら聞いてもらえないわよ」


「…わかってます」


「よし。それじゃあ今日は解散‼
明日に備えてゆっくり休みなさいよー」


「失礼しました」

俺たちは社長室から出て、エレベーターホールに向かった。


「…明日から大変なことに…」

真がぽつりとつぶやいた。

「でも、それで世界に行けるんだ」


「…成功、させたいよな」

馨がまっすぐ前を見ながらそう言った。

誰も、返事をしなかった。
全員が同じことを思っている、それが空気でわかった。


そのためには、努力をしなくてはいけない。

めんどくさい、なんて思ってるやつは、この中に居なかった。