「あなたの歌には感情がこもっていない。ま、それが普通なんだけどね。
……普通が世界で共通するはずがない。」
エミリーの声のトーンが下がった。
「歌はどんなに身近に感じられるものでも、第三者の立場でその歌を聞いているもの。
その聞き手を、どれだけ歌の世界に引き込めるか…それが勝負よ」
「…はい‼」
「じゃああなたは明日から私と特訓ね」
エミリーがにっこり微笑んだ。
…嫌な予感がしたが、その予感が当たらないことを願う。
「…さて、エミリーにこてんぱんに言われたけど」
苦笑いを浮かべながらまどかさんが立ちあがる。
「sabotage、二カ月後の新曲であなた達は世界に行くの。その新曲は日本、アメリカ、イギリスに同時発売するから。」
「え…一気に三カ国も?」
蓮が目を見開く。
「ええ」
「しかもアメリカとイギリス…ってことは」
「蓮は勘がいいわねー」
まどかさんがケラケラ笑った。
「もちろん、英語の歌詞よ」
「……はい?」
そんなまぬけな声を出したのは、俺だった。



