司会者が今から演奏する曲のタイトルを読み上げてから馨がドラムを叩き始める。
観客席が湧き上がる。
俺が歌うと更に湧く。
サビでは全員が跳ぶ。
俺達は顔を見合わせて、笑いながら楽しく演奏した。
演奏が終わり、拍手を浴びる。
とても楽しく、まだ歌っていたかった。
「sabotageの皆さん!!ありがとうございました!!」
俺達は全員でお辞儀をしてからアーティスト達が座っている席へと向かう。
「楽しかったなー」
「まだやってたかったなー」
席に戻ると、そこではトークが繰り広げられていた。
「enさんはいかがですか?最近、苦労なさったこととか…」
司会者の問いかけに答えるために、彼女が持ったのはマイクではなく、スケッチブックとマジックの黒いペン
サラサラと、紙の上でペンをはしらせ、問いかけに答えた。
「うっひゃー…相変わらず徹底してんなぁ」
「そんなにバレたくないのかね。自分が誰か」
「…なんで那智怒ってんの?」
蓮が俺の顔を覗き込む。
「怒ってねーよ」
「嘘だな。enは俺らの先輩でもあるんだから、我慢しろよ」
「先輩っつっても半年だけだろ…」



