「…二人は、何の話してたの?」
俺は何気なくそう尋ねる。
俺のその言葉に、まどかさんは隠しきれない安堵の表情を浮かべ、
「今晩のおかずの話よ。七海、やっぱり私、今晩はエビチリ食べたいな」
「はいはい。じゃあ私は先に帰るね。那智君はごゆっくり」
七海は笑顔を浮かべながら、社長室を出て行った。
…二人とも、演技がうまい。おかずの話をしていなかったことを、俺は知っている。
なのにペラペラとさっきの会話をやってのけた。
「…すごいな」
「何が?」
「…七海、エビチリ作れるんだと思ってさ」
俺は社長室にあるソファーに深く腰をかける。
嘘つきは、お互い様か。
「で、私に話って何よ」
「…sabotageで世界に行くにはどうしたらいい?」
社長の席に座っているまどかさんの目を見ながらそう問いかけた。
まどかさんは天井を仰いで、椅子の背もたれに全体重をかける。
「…わかって言ってるの?」
上を見ているからか、少し声が低い。
「何を?」
俺がそう答えると、まどかさんは姿勢を正した。