「まどかさんと呼びなさい‼」


中には、まどかさんと七海しかいなかった。

俺が望んだ『七海でも、まどかさんでもなく、七海に声が似ている第三者』の存在など、無かった。


「…悪い、まどかさん」


「那智君どうしたの?今日はオフでしょ?」

七海が小首をかしげる。


…ああ、お前だったのか七海。

世界的な歌姫の正体は。


…昨日、sabotageが楽屋で話しているのを聞いてどう思ったんだ?

enと世界を舞台にして戦いたいという俺たちの目標を聞いて…


応援しておきながら、心の中では笑っていたか?

呆れていたか?

enと…自分と戦うなんて夢のまた夢だ、とでも思っていたのか?


「…まどかさんに聞きたいことがあってさ」


「そうなんだ」

七海は、笑った。

その笑顔が嘘なのかどうか…俺には判断できない。


―この時の俺は、ここまでしか彼女の秘密を知れなかった。

―彼女は、更に大きな秘密を抱えているとも知らずに…


勝手に、疑心暗鬼になっていた。