「sabotageの皆さんです!!今夜は新曲をテレビ初披露してくださいます!!」

司会者の元まで歩み寄り、他のアーティスト達の入場を待つ。


一番最後に登場するのは

「最後にこの方!!enさんです!!」

やはり、彼女だった。


enという名の彼女は、顔に仮面をつけていて素顔を晒さないことで有名だった。

でも、それだけで注目を浴びている訳ではない。


彼女は、抜群に歌がうまいのだ。


CDを出せば、それは各国でミリオンを達成するほど。

世界的に有名な作曲家達が曲を提供させてくれ、と懇願するほどだった。


「…那智、怖いぞ」


「あ、悪いな、サンキュー」

ドラムの馨に注意された俺は、彼女を見るのをやめた。


司会者が俺達にマイクを向ける。

「sabotageの皆さん、大変な人気ですねー!!」


「はい、嬉しいことですね。これからもファンの皆様を裏切らないような曲を演奏していきたいです」


「なるほど!!ではスタンバイよろしくお願いします!!」

俺達はステージへの移動を開始する。


「さあ、やりますか」

ベーシストの真が伸びをしながらつぶやく。

「真、それは俺のセリフだ」


俺は横目で真を見ながらマイクの位置を調整した。


あと20秒で演奏開始だ。

「準備は?」


「「「ばっちり」」」