「特に時間は決まってないけど…早めだな。ほら、このくらいの時間だと他の科の生徒もいるから騒ぎになりやすいし…
早くにくるなら変装の必要もないから」
「…お前、さっきの見てたか?」
「え?那智が囲まれてたとこ?マネージメント科の人達に助けられたとこ?七海ちゃんに怒られてたとこ?」
「そうか全部見てたってことだなぁ‼」
教室の扉を開けて、席に着く。
教室には、テレビで見る顔、雑誌で見る顔、たびたびテレビ局の廊下で見る顔があった。
もちろん、全員が…ではない。
まだ駆け出しの奴らもいる。
俺達もつい最近までその中にいて、この教室に来るたび、悔しさを感じていた。
「でもさ、那智。せめてマスクするくらいは…」
「いや、なんかさ、俺のことなんてそんな知られてる気がしないからつい…」
「わかるけど。気づかれてもみくちゃにされてケガして活動休止とか洒落にならないからな」
馨が呆れた表情を浮かべる。
教室にいる奴らは各々好きなことをしていて、俺達の会話なんて聞いていなかった。
「気をつけるよ」
「頼むぞ」



