「先生にも青春はあったんですよね?」 「うーん、どうかな」 ややあいまいにことばを濁して、逆にたずねてきた。 「西田は青春しているのか?」 「青春って、範囲広いですよ」 「そんなことないだろう。十代の青春といったら、恋か部活動と相場が決まっている」 「じゃあ、そのどちらかです」 「そうか、お前は恋をしているのか」 「そうは言っていません」 「言っているようなものじゃないか。おもしろいやつだな」 あたりまえだが、僕が部活動に所属していなかったことは先生も知っている。