「分かったなら、拓って呼んで?」



「はい。」



私はドキドキが
おさまるように
大きく深呼吸をした。



「た、拓!」



言い終えると、
そのまま体は先生の腕の中。



「よくできました、実紅。」


耳元で囁く先生。


私は恥ずかしくての
仕方なく、
先生の胸に顔を押しあてた。



「あ、そうだ。」



「どうかしましたか?」



「亮への返事だけど……」



いきなり
本題に入ったので
少し身構えしてしまう。


そんな私を見て
先生はふっと笑う。



「実紅。亮への返事は俺にさっき言った亮への素直な気持ちを言えば良い。」



「え?」



「大切なのは偽りではない気持ちを相手に伝えることだ。そしたら亮だって、残念な結果でも告白して良かった、って思えるよ。」



そっか…。


大事なのは
シナリオな返事ではなく
あたしの気持ちを
正直に伝えることなんだ。


「先生、ありがとう!」



やっぱり先生は
素敵な人だな。



「頑張れよ。」



うん、と答えるように
私は先生に抱きついた。