好きでもない男性の元に嫁ぎ。
好き好んで来たわけではないのに何故こんな目に合っているのかさえ分からない。
周りは自分を見下したように蔑むように見る。
被害妄想、自意識過剰、そう言ってしまえば終わりなのかもしれないけれど敵意があるのは確実だった。
イヴの周りを囲むのは四人の身なりの綺麗な美しい女性達。
侍女さえもが美しくそれでいて煌びやかだった。

「イヴ様、そう畏まらずともよいのですよ?」

「そうですわ。私達はイヴ様の歓迎しておりますのよ?それにその服凄くイヴ様に似合っておりますわ」

わざとらしい言葉の端に刺を感じた。
きっと周りの女性達は正妻の座を狙っているのであろうがイヴにはどうでも良かった。
とにかくこの場から早く出ていきたくて仕方無くて僅かに顔に翳りを帯びさせた。
だけどこの場から逃げるということはこの後宮でやって行くのは無理だということを示す。
イヴは気丈にルートを見つめてふわりと柔らかな笑みを浮かべた。

「有り難う御座います。私は王に会うことはそうそう無いでしょうが皆様に歓迎していただけて嬉しく思います。けれども慣れぬ場所に来たばかり故気分が優れませんので今日は失礼致します」

そう言えば馬鹿を見るような目をされたが気にはしない。
王の寵愛を巡り争うのがこの後宮であることを知っているがイヴの心にはたった一人だけしかいなかった。