漸く王宮の門を潜り馬車はある場所で止まった。
其処は凄く煌びやかで目を覆いたくなるほどでだけれどフィリアに連れられて入った桜月殿は広々とし庭に一本だけある大きな桜の木は永遠に枯れないと言われており今もなお咲き続けているらしい。

「イヴ様には今日から此処に住んでいただきます。この桜ノ宮の他に陛下の宮を囲むように妾妃様の住む宮が御座います。正妃様がお住みになるのは王の宮のすぐ傍に陽華ノ宮で御座います」

それもまたイヴはノクターン村で学んでいた。
陽華ノ宮から始まって聖蘭ノ宮、梅花ノ宮、紅蓮ノ宮、撫子ノ宮と順に王の宮に近く、桜ノ宮とは王の宮からかなり遠く、侍女から妃になった者やはたまた王の関心がなくなった者に与えられていると聞く。
つまりイヴは侍女達と同じだと言うことに内心で溜め息を吐き出した。
特別扱いをされたいわけではないが此処まであからさまだと流石にやるせなくなるものだ。
イヴには何の後ろ楯も無いのだから当たり前かもしれないと知らず知らずの内に溜め息を吐き出していた。
フィリアはそれには何も言わないでイヴに宛がわれた部屋へと向かって歩いていく。
それに気がついたイヴも慌てて後に続いた。