重い表情をした一人の女性。
滑らかなクリーム色の髪は腰までありふわりと広がり着ている服は質素な水色のワンピース。
白い肌はきめ細かく少し大きな瞳は垂れ目で濡れたルビーのような赤い瞳を持つ女性の名はイヴ。
ノクターン村で育った村娘である彼女は今日、何故か王都のしかも王宮の中にある後宮に召されることになった。

「イヴ、本当に行っちゃうのね」

必要最低限の物だけ持たされ馬車に乗ろうとしたイヴにそう声をかけたのは姉であるリーフはその藍の瞳に涙を浮かべていた。

「お姉ちゃん……」

本当なら後宮は高位の貴族しか入れないような場所。
なのに何故自分のような国境にある小さな村の住人である自分が何だって後宮に召されるのかが分からなかった。

「体に気を付けてね。ちゃんと、ご飯を食べてね?」

姉の言葉にコクりと頷きながら涙を耐えて言葉を紡ごうにも何も言えなくなる。
王都からの使者に促されて馬車に乗り込み姉と村人達に見送られて里を出た。