嫌がる暇も与えない程に、躊躇い無く誘拐した私に、最初は酷く怯えていた。けれど、此処で1ヶ月程度過ごしたら、意外と快適な生活が与えられた為か、この女はすぐに警戒心を解いた。
 私は、この女が嫌いだ。
 たとえ一時とはいえ、愛しいあの人に可愛がってもらえた女なんて、好きになれる要素が微塵も無い。
 だけど、あの人はこの女を私にくれた。お気に入りだった女を、私にくれた。
 この瞬間は嫌いじゃない、所詮この女も、捨てられる程度の女だったと思える。どんなにあの人が求めようと、いつもすぐに飽きて私にくれる。
 私は・・・すぐに飽きられる、こんな女とは違う。
 だって誰も、不要になったからと言って、“オモチャ”に“オモチャ”はあげないだろう。
 「こちらへ、来て頂けますか?」
 私は女を連れ出した。
 地下室生活が長かった為か、喜んで付いて来た。
 連れて行くのは、私の部屋の、大きな大きな冷蔵庫。
 愛しいあの人がくれたものを、全部綺麗にとっておけるように用意したもの。
 女がどれ程憎らしくたって、愛しいあの人がくれたものだから、大切に保存しなくてはいけない。
 さぁ、どうぞ冷蔵庫へ・・・。