あたしの前で、静かに泣く一樹君のお母さん。




あたしは、……なんにも言えなかった。




それはつまり、




「本当にごめんなさい。……一樹と、別れてくれないかしら?」




そういうこと、らしい。




それから、沈黙がずっと続いた。




「……お願いよ…、辛いの…。本当に悪いんだけど…」




結局、あたしはなんにも言えやしなかった。




今日、退院出来るから、颯と二人で帰る。




あたしには、生気も幸せも欠けていた。




自分の存在が、嫌になってきた。