「お待たせ!」

純一が車に乗ってやってきた。

「全然待ってないよ。

 もう、お腹空いちゃった!

 早く行こう♪」

と、有喜は車に乗った。

純一はグレーのスーツに、紅色のネクタイをしている。

今日の純一はいちだんと格好いい!

と、思いながら、2人の会話は弾む。

「今日は久しぶりにデートに誘ってくれたのね。

 最近全然遊んでくれないから、

 私見捨てられたのかと思ってたわ。」

と、軽く冗談交じりに笑い、

女の子の寂しさを訴えている有喜が、

不器用な女性を感じさせられる。

純一は少し言い訳混じりに

「最近仕事が忙しいからなぁ。

 寂しい思いをさせたか?

 ごめんな。

 今日は最近新しくオープンした、

 店を予約したから!」

と、有喜の顔色を少しうかがいながら話している。

車の中ではいつものように、話は弾み

2人の世界に浸っていた。

車を走らせること20分、

山道を少し登ると遠目にクリーム色の

まるでディズニーの世界から出てきたような、

かわいいお店が木の陰になり

少し遠慮がちに建っている。

「うわ~ぁ!

 かわいいお店♪

 こんなとこにお店が出来たんだ?」

と、有喜がヘンゼルとグレーテルが

お菓子のおうちを見つけたかの様に喜ぶ。

決して人前では見せない顔…

純一の前だけでは有喜も

一人の女として向き合えた。

有喜はこんな幸せがずっと続けばと願っていた。

いや、続くと信じていた。