3人は

有喜の病室に戻り、

気持ちが落ち着くまで

3人で一緒の時を

過ごした。

有喜は重い口を開いた。
 
「私は…

 何の病気なの?
 
 さっき何か言ってたよねぇ?」

2人は目を見合わせ、

戸惑いを隠せなかった。
 
純一はとっさに

「今、

 病気の原因を

 調べているところなんだよ。」

と、嘘を付いた。
 
有喜は何も疑わずに

「そうなんだ。

 病気じゃないと思うよ。

 私、何ともないから。」

有喜の笑顔が

純一の胸を打つ。

ますます罪悪感の渦に駆られた。
 
有喜の闘病生活は始まった。

病院にいる時間は

仕事をしている時とは

雲底の差だった。

時間に追われている

生活をしていた有喜だったが、

病院の中では

1日何回時計を見ても

なかなか時間が経たない。

1日って

こんなに暇だったかな?

5分って

こんなに長かったっかな?

人生って

何なんだろう…。

私は何で

生きてるんだろう?

生きる目的、

失っちゃった…。

有喜は

自分が駄目な人間に思えてきた。

このまんまじゃ駄目だわ!

人間腐ってしまう!

私早く退院できるよう

先生に相談してみよう。

仕事も気になってきたし、

あんまり席外してたら、

椅子奪われちゃうよ。

有喜は気持ちが落ち着かなくなり、

病棟をグルグル

散歩し始めた。

ナースステーションに着き、

先生の姿を探すが

見あたらない。

準夜の看護師は

いっそう忙しそうに

バタバタ働いている。

有喜がナースステーションの

椅子に座り先生を待っていたが、

なかなか来ない。

待ちくたびれた有喜は

辺りを物色し始める。

と、一冊のカルテを見つける。

カルテの背表紙には

『御手洗有喜』

の文字がある。

徐に手を伸ばし、

カルテを開く。