繋いだ手

「ごめん、ちょっといいかな？」


言い掛けて、

善の頭が
『コクリ』するのを


見届ける間もないまま、


あたしの指先は
急いでいる。



ジュースホルダーに置かれた、


くたびれた丸い筒の蓋をあけ、


斜めにすり減ってる
細い隙間のところに、



吸い掛けのバージニアを挟んだ。


それと同時に、

右手の親指が、


音の鳴るのを止める。



「もし…？……うん、

久しぶり。　

あぁ……、うん。

今…　　
走ってる。

……え？今ｧ…？

ん、無理。…

…違う、…友達。


わかった…今度、。


うん、。

あ…ぅん。

ぢゃね……ぅん。」


切って画面が

待ち受けに戻ったのを確認したと同時に、


その画面に


待ってなんかいなかったよ
バ〜カっ。


って、


声に出さずに

言ってやった。




すぐに、
隣りの善に


『はっ』として、

あたしは、

残りの煙草の、
長くつながった灰を


筒の底に
『トントン』して、


その後、


大きく吸い込み、
吐いた。



善は


その様子を一通り見て


（ん？）

と感じたようだったけど、

話したければ


自分からそうするだろう


と、言うように、

こっちをチラ見した後、



また


正面に視線を戻した。




受話器の先の声は…