「龍は…どんな髪の毛が好き?
やっぱりロング?」

思いきって聞いてみた。

「似合ってれば…何でも……。」

「私…髪切ろうかなって…思って…。」

「そうなんだ。」

「いっつもそこの千円カットだから……
今度は美容室に行ってみようかなって……。
でも美容室って怖いんだよね。
男の人とかいるし……。千円なら無言で切ってくれるけど
会話しないといけないって言うし…。苦手だな…。」


なかなか美容室に行けないのはそれがあった。

あの世間話とか知らない人と
会話をするのは私には 恐ろしく苦痛だったから…。

「うちのねえちゃん
美容室やってんだぞ。」

「え~~~!?すごい!!
経営者なんだ~~~~。」

「行ってみるか?ねえちゃんにやってもらえばいいよ。」

「でも……恥ずかしいな……。
龍のおねえさんに……恥ずかしい……。」

「大丈夫だって 勝手にしゃべってっから。
明日でも行ってみるか?」

龍は携帯を出してメールをした。
家に近づいてきたところでメールの返信が戻って来た。


「ん じゃ…明日さ地下鉄の2番で
10時に 待ち合わせしよう。
店まで連れて行くよ。その間 俺ぶらぶらしてるからさ。」


デート???


そうなんだ 明日はデート……
考えてる暇なんかない……洋服が…
デートできる洋服が……ない……。